次元門(Planar Gate)は次元間を連結する魔法の門や通路のことである。
MTG黎明期には次元門を表現した「Planar Gate」というそのままな名称のカードがカードセット「レジェンド」に収録されている。
本記事では次元門の一般的な解説を行い。カードの「Planar Gate」やその他の次元門カード(ファイレクシアの門発生装置および大修復後の次元橋)について登場作品を絡めて紹介をしたい。
次元門の解説
次元門(Planar Gate)とは異なる次元と次元を繋ぐ魔法の門、あるいは、異世界から何かを運んでくる通路のことである。「ゲイト(Gate)」や「ポータル(Portal)」などとも呼ばれる。
この手の次元門はかつてのMTGストーリーでは定番の存在であった。装置や魔法で生成したり、自然な次元間連結現象としてよく登場していた。
自然現象としての次元門の例の1つがドミナリア次元ティヴァン砂漠にあったラバイア次元につながる竜巻状のポータルである。
AR4500年の大修復で多元宇宙の法則が変化したことで全ての次元門は消失した。AR4560年現在で機能している特殊な例として次元橋(Planar Bridge)がある。
Planar Gate
Nireya reached through the Gate, sensing the energies trapped beyond.
ニレヤはあちら側に封じられたエネルギーを感じ取りつつ、門の中へと手を伸ばした。
引用:Planar Gateのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳
「Planar Gate」すなわち「次元門」はカードセット「レジェンド」収録のアーティファクト・カードである。
次元を連結する存在・現象を1枚のカードとして表現した、MTG黎明期のカードがこの「Planar Gate」である。このカードでは、これ自体が異界からのクリーチャーを呼び出さないものの、召喚呪文のコストを低減してサポートするメカニズムによって異界に開かれた門を表現している。
ストーリー作品において、特にこのカード「Planar Gate」自体に言及しているのはコミック版フォールン・エンパイアvol.2がある。コミックの最後で、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat)はオークとゴブリンの軍勢を魔法で召喚してモントフォードの街を攻め滅ぼしているが、巻末解説でPlanar Gate経由だと解説されている。
ファイレクシア関係の次元門カード
この「Planar Gate」の他にも次元門の類をカードとして表現したものは複数存在している。
初期のMTGのストーリーでは、次元間侵略者であるファイレクシアが長年にわたる悪役として出続けていたために次元門カードはファイレクシア関係のものがかなり多い。1ここでいくつか選んで紹介しよう。
Gate to Phyrexia
“The warm rain of grease on my face immediately made it clear I had entered Phyrexia.”
–Jarsyl, Diary
「温かい油の雨が顔に降って来たので、私はファイレクシアに入ったとすぐに理解した。」
–ジャーシル「日誌」
引用:Gate to Phyrexiaのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳
「Gate to Phyrexia」すなわち「ファイレクシアへの門」はカードセット「アンティキティー」に収録されたエンチャント・カードである。
フレイバー・テキストの発言者ジャーシル(Jarsyl)は、ファイレクシアと生涯をかけて戦い続けたプレインズウォーカーであるウルザ(Urza)の子孫に当たる人物だ。ジャーシルはこの門を通ってファイレクシア次元を訪れた記録を後世に残している。
小説The Gathering Darkでは、過去の記録としてジャーシルの言及がある。ジャーシルはウルザの孫に当たる魔術師で、ジョダー(Jodah)の高祖父2である。ドミナリア暗黒時代中、ファイレクシアを訪問できる何らかの方法を発見した後に、行方不明になったとされる。それから2世紀以上が経過したAR430年、魔導士議事会の長メアシル(Mairsil)はジョダーの協力を取り付けて、魔法的な手段に拠ってファイレクシアに門を開く実験を行った。だがその試みは失敗してしまう。
ではこのGate to Phyrexiaは何を表したカードなのだろうか?小説の記述からジャーシルが次元門を作る魔法を編み出していた可能性があるものの、このカード自体がカードセット「アンティキティー」に属することを踏まえると、ジャーシル誕生以前のアンティキティー戦争期にはすでに存在していたと考えるのが妥当だろう。とすると、その当時にはドミナリアとファイレクシアを繋ぐ次元門はたった1つ、コイロスの洞窟にしか存在していない。したがって、このカードはコイロスの次元門を示しており、ジャーシルはこの門を経由して次元間移動を行った、と解釈できる。
コイロスの次元門はAR-5000年頃、プレインズウォーカーのダヴェッド(Dyfed)の力でファイレクシアとドミナリアを連結したものだ。スラン=ファイレクシア戦争の最後にレベック(Rebbec)は鍵となるパワーストーンで門を封印し、以後5000年余りにわたってファイレクシアはドミナリアに接触する手段を失った。そしてAR19年、コイロスを発見したウルザとミシュラの兄弟が鍵のパワーストーンを持ち去ったことで門が再び開かれることになった。この物語について詳細は小説The Thranと小説The Brothers’ Warで語られている。
Phyrexian Portal
「Phyrexian Portal」つまり「ファイレクシアの門」はカードセット「アライアンス」に収録されたアーティファクト・カードである。
公式記事Encyclopedia Dominiaの見出し語解説によると、このカードはファイレクシアに通じるゲイトやポータルを表している。通常はクリーチャーやアーティファクトを生け贄にしてこれらの次元門が開かれるが、時には魔法のエネルギーや知識を代償とすることでも門を開けることが可能だという。掌編Tande’s Journalは、ファイレクシアの門に偶然引き込まれてしまった恋人を助けにファイレクシア次元に跳び込んでいく物語だ。
さて、Phyrexian Portalが収録されたカードセット「アライアンス」の時代設定はAR2954年であるが、この時代にはファイレクシアは人工的な次元門を発生する装置の実用化を成し遂げている。この技術革新によって「シャード(The Shard)」が消失したドミナリア次元に侵入・離脱が可能になっている。もはやコイロスの次元門を経由する必要は無くなったのだ。
ドミナリアが「シャード(The Shard)」に閉ざされた時代、ファイレクシアの次元間移動技術は小説Planeswalkerに見ることができる。この小説には門発生装置(Portal Device)の1種「アンビュレーター(Ambulator)」が登場しているのだ。
アンビュレーター(Ambulator)とは、ファイレクシアの次元移動機械である。作品中では様々な形態が描かれていた。必ずしも「門」の形状をしているとは限らず、固定された大型機械であったり、運搬可能な装置であったり、乗り物であったりなどの種類には幅がある。
小説Planeswalkerの他ではアンビュレーターという名称はほとんど出てこなくなるものの、単に「ポータル」と呼ばれているファイレクシアの人工次元門はその多くがアンビュレーターに分類できるものだ。
そして、後に時のらせんブロック小説三部作(Time Spiral、Planar Chaos、Future Sight)でアンビュレーターは再びストーリーでスポットライトが当たっており、AR4500年にヴェンセール(Venser)が修復していた瞬間移動機械の乗り物はファイレクシアの遺物のアンビュレーターであった。
移ろいの門
“In Barrin’s name” cried Lyna as Hanna’s sword passed through her, “Ertai sends word that the portal is open—but not for long”
「ベアリンの名によって!」とライナはハナの剣が自分を通り抜けると同時に叫んだ。「アーテイからの伝言よ。門が開いていると–でも、そう長い間ではないと!」
引用:移ろいの門(Erratic Portal)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
移ろいの門(Erratic Portal)はカードセット「エクソダス」に収録されたアーティファクト・カードである。この門はラース次元にあった次元門でメルカディア次元と繋がっている。
このうつろいの門は、物語の主人公たちを乗せたウェザーライト号がラース次元を脱出する出口であった。カードセット「エクソダス」の最後はこの門へとウェザーライト号が突入した場面となっている。この場面に至るまでの冒険の全ては短編集Rath and Stormで語られている。
ラース次元にはこのカードのようなごく普通の次元門があるだけではなかった。ラースの要塞には次元間の一部を重ねて人工ポータルを形成する機構が設置されていたのだ。
この機構の最終目標はラース次元をドミナリア次元に重ね合わせて次元丸ごとを移動させる「次元被覆(Planar Overlay)」計画にあった。この機構を利用した人工ポータルは小説Bloodlinesでその仕組みや実際の運用が描かれており、次元被覆の直前と実行は小説Nemesisおよび小説Planeshiftにおける物語の主軸の1つとなっている。
ベルベイの門
The fight will continue on a new battlefield.
戦いは、新しい戦場でまだまだ続くだろう。
引用:ベルベイの門(Belbe’s Portal)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ベルベイの門(Belbe’s Portal)はカードセット「ネメシス」に収録されたアーティファクト・カードである。
ベルベイの門はAR4205年、特使ベルベイがファイレクシア本国からラース次元の要塞に持ち込んだ小型の次元門発生装置が起動したシーンを描いている。ベルベイの亡骸を抱えているのはエルフ王のエラダムリー(Eladamri)で、エラダムリーの手を引っ張って門をくぐり抜けているのはタカラ(Takara)である。この場面に至るまでの物語は小説Nemesisで仔細に描かれている。
ファイレクシアの門船
The sky split, and the air crackled and roiled. The Phyrexian invasion of Dominaria had finally begun.
空は裂け、大気は割れてかき乱れた。ドミナリアへのファイレクシアの侵略がついに始まったのだ。
引用:次元の門(Planar Portal)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
These devices have been known to pull entire worlds through the Æther.
それは、霊気の向こうから世界すべてを引きずりだすことすらできる。
引用:次元の門(Planar Portal)の基本セット第8版再録時のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
次元の門(Planar Portal)はカードセット「インベイジョン」に収録されたアーティファクト・カードである。
このカードはファイレクシアが建造した「門船(Portal Ship)」をカードで表現したもので、AR4205年のファイレクシア侵略戦争で多数が戦線に投入された。巨大な飛翔艦で、艦体下部に次元を繋ぐ門を形成し、ファイレクシアの船団や怪物の大群をドミナリアへと吐き出した。
この門船の実際の運用は、小説Invasionで確認可能だ。「門船(Portal Ship)」という呼称はカードよりも先にこの小説中に出てきたものである。
大修復後の次元門
“It is finished. Now the real work can begin.”
–Tezzeret
「完成だ。ここからが本番だぞ。」
–テゼレット
引用:次元橋(Planar Bridge)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
次元橋(Planar Bridge)はカードセット「霊気紛争」に収録されたアーティファクト・カードである。
AR4500年の大修復によって多元宇宙の法則が変化したことで、全ての次元門は機能しなくなった。AR4560年現在ではカラデシュ次元で発明されたこの「次元橋」が限定的ながらも機能が確認されている唯一の次元門である。
次元橋のコアはプレインズウォーカー、橋の主、テゼレット(Tezzeret, Master of the Bridge)の胸部に取り込まれている。テゼレットは灯争大戦において、次元橋を起動してアモンケット次元から戦慄衆軍団をラヴニカ次元に出現させた。次元橋は生物を運べなかったが、ラゾテプ装甲で全身をコーティングしたアンデッドならば次元移動が可能であったのだ。
灯争大戦中にカーン(Karn)がテゼレットの次元橋を破損させて機能を停止させている。ちなみに、カーンが「テゼレットの胸にあるポータルへ拳を叩き込み」次元橋を停止させた、という情報が流布されているが完全な間違いである。この件についてはこちらの記事で扱っているので参考にされたい。
さて、次元門についてMTG史を最初期から現代まで振り返ることができた。では今回はここまで。
次元門の関連記事
カードセット「レジェンド」関連のリスト
カードセット「灯争大戦」関連のリスト
ドミナリア次元とラバイア次元を結ぶポータルの解説記事