舞台座一家の料理人、ロッコ(Rocco, Cabaretti Caterer)はカードセット「ニューカペナの街角」収録の伝説のクリーチャー・カードである。
今回は舞台座一家が誇る名シェフ、ロッコを解説する。
舞台座一家の料理人、ロッコの解説
They wouldn’t admit it, but some people join the Cabaretti just for the food.
決して認めることはないだろうが、飯のためだけに舞台座一家に入団した人も中にはいる。
引用:舞台座一家の料理人、ロッコ(Rocco, Cabaretti Caterer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
舞台座一家の料理人、ロッコ(Rocco, Cabaretti Caterer)はニューカペナ次元の舞台座一家に所属するエルフの料理人である。性自認はノンバイナリー(次節参照)。
公式記事The Legends You’ll Find in Streets of New Capennaによると、ロッコの設定は以下のようなものだ(本サイト独自解釈でまとめた)。
ロッコは社交的な性格で、舞台座一家でも最高位のイベントスペース、集会場、ダンスフロアである「ヴァントリオーネ」で料理長を務めている。ロッコが取り仕切るのはヴァントリオーネの様々な厨房に留まらない。舞台座の所有する数多くのクラブやレストラン、食堂、スピークイージー1のメニューも管理しており、こうした裏方の働きが高街のエリート層の味覚の最先端を決めているのだ。ロッコの食の帝国はニューカペナのあらゆる階層にまで広がっている。
物流管理のやり手であるばかりでなく、巧みな調理技術もそれに勝るとも劣らないものだ。ロッコが考案する料理はどれもバランスの取れた逸品で、異なる風味と食感を組み合わせて、ごくごくありふれた料理であっても嬉しい出来事に変えてしまうのだ。ロッコの料理は「光素」を取り入れたことで更なる高みに至った。副料理長たちはこれほどインスピレーションを受けているロッコの姿を見るのは初めてだと語っている。
また、連載ストーリーの第3話「試練(Tests)」での描写を見るに、ロッコは厨房にこもり切りの料理人ではなく、バーテンダーとしてカウンターに立って接客することもあるようだ。なるほど社交好きな性格なのがよく分かるエピソードである。
舞台座一家の料理人、ロッコの性自認
ロッコは立派な頬ひげを蓄えていて男性的な風貌であるが、性自認はノンバイナリーである。
ロッコはノンバイナリーであるため、ストーリー作品や設定解説記事において人称代名詞は「he」や「she」ではなく「they」が用いられている。
ところが、公式和訳ではそれを汲み取れておらずにロッコを「彼」と呼んだり、ロッコ1人を指しているのに複数形の「彼ら」と誤解釈したりしている。
舞台座一家の料理人、ロッコのフレイバー・テキスト
They wouldn’t admit it, but some people join the Cabaretti just for the food.
決して認めることはないだろうが、飯のためだけに舞台座一家に入団した人も中にはいる。
フレイバー・テキストでは「飯のためだけに」と訳されていて、食い詰めて仕方なくとかいった雰囲気が出てしまっている。しかし、ロッコの料理は高街のエリート層に向けた「質」を重視したスタイルであるから、こういうあまり品のない言い方は適していないだろう。
決して認めることはないだろうが、まさにこの料理目当てで舞台座一家に入団した人も中にはいる。
ロッコが指揮する舞台座の美食目当て、そういう意味合いの方がより設定に合っているはずだ。
舞台座一家の料理人、ロッコの関連カード
この節ではロッコと関係があるカードを取り上げよう。
フレイバー・テキストで言及があるカードは1種類のみと寂しいので、その他に設定やストーリーで直接絡みのあったキャラクターたちにも焦点を当ててみた。
温かい歓迎
“Welcome to the family. Chef Rocco sends their congratulations.”
「一家へようこそ。シェフのロッコからのお祝いです。」
引用:温かい歓迎(Warm Welcome)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
温かい歓迎(Warm Welcome)はカードセット「ニューカペナの街角」収録のインスタント・カードである。
フレイバー・テキストではロッコが登場している。舞台座一家の客を歓迎してロッコから料理が振舞われた場面のようだ。
華やいだエルズペス
華やいだエルズペス(Elspeth Resplendent)はカードセット「ニューカペナの街角」収録の伝説のプレインズウォーカー・カードである。人間女性。
連載ストーリーの第3話「試練(Tests)」において、エルズペス・ティレル(Elspeth Tirel)は舞台座一家の従業員として潜入し、「光素」の供給源である「源」の調査任務に乗り出した。
この時、エルズペスが舞台座で自分を雇ってほしいと最初に交渉した人物がロッコであった。バーテンダーとして接客中のロッコは、エルズペスの単刀直入な仕事探しの要望を、けんもほろろに受け流してしまう。しかし、たまたまそこに居合わせた歌姫キット・カントの取り成しで、エルズペスはどうにか舞台座に雇われることとなるのだった。
殺戮の歌姫、キット・カント
殺戮の歌姫、キット・カント(Kitt Kanto, Mayhem Diva)はカードセット「ニューカペナの街角」収録の伝説のクリーチャー・カードである。レオニン女性。
キット・カントは舞台座一家のトップスターの歌姫だ。連載ストーリーの第3話「試練(Tests)」では、バーテンダーをしていたロッコはカウンターにキットがやって来ると、「いつものですね、歌姫?」「よく分かってるわね、ロッコ」と光素を差し出して喜ばれていた。2人はとても親しげに描かれている。
動物学者、ベニー・ブラックス
動物学者、ベニー・ブラックス(Bennie Bracks, Zoologist)はカードセット「ニューカペナの街角」の統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。エルフ男性。
ベニーは舞台座一家の正式な一員ではないものの、希少で美しい生き物と言えば真っ先に声を掛けられる人物だ。あらゆる種類の異国風で高価なペットを取り扱っており、その中にはロッコの食材となるものも含まれている。
魂の養育者、ベス
魂の養育者、ベス(Bess, Soul Nourisher)はカードセット「ニューカペナの街角」の統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。人間女性。
ベスは食は魂を養うものをモットーとする料理人だ。彼女はかつてロッコの下で副料理長2を務めていたが、生まれ育った下層街に自分の店を構えるためにその職を辞した。
舞台座一家の料理人、ロッコの登場ストーリー作品・記事
舞台座一家の料理人、ロッコ(Rocco, Cabaretti Caterer)は連載ストーリーの第3話「試練(Tests)」に登場している。
この話ではロッコはバーテンダーとしてエルズペスを接客した。
私の個人的な意見だと重々承知の上であるが、この第3話翻訳版でのロッコの口調がどうにもよろしくはない。初対面から最後まで、エルズペスに対して蓮っ葉でぶっきらぼうでどこか嫌味なのだ。本来の設定では、ロッコは社交的な性格で、舞台座の最高位「ヴァントリオーネ」の料理長を務め、高街のエリート層を虜にするやり手、のはずなのだが、まるでかけ離れた人物にしか見えない。もし仮に、完璧にめかし込んではいるもののエルズペスが華やかな場所には似つかわしくないタイプだと初見で見抜いていたとしても、それでもなお、最高位のヴァントリオーネの品格に合った物言いで話しかけるはずだと思うのだ。
設定解説記事の公式和訳に関する指摘
公式記事The Legends You’ll Find in Streets of New Capennaでは、このキャラクターに関する解説文が公開されている。
公式和訳版『ニューカペナの街角』の伝説たちも公開されているが、その翻訳内容に怪しいと感じる部分があるのでその点を以下に書き残しておく。本サイトでの記述内容が、公式和訳版記事と食い違っている理由はここにある。
Rocco is the gregarious head chef at the Vantoleone, the Cabaretti’s premier event space, gathering hall, and dance floor. Rocco manages not only the various kitchens of the Vantoleone, but the menus of the many clubs, restaurants, diners, and speakeasies the Cabaretti own as well, working behind the scenes to dictate the tastes of Park Heights’s elite. Their culinary empire spans all levels of New Capenna.
Their mastery of logistics is matched by their deft hand in the kitchen; each dish they devise is a masterpiece of balance, combining different flavors and textures to create events out of even the most mundane food. With the introduction of Halo to New Capenna, Rocco’s cuisine has found new heights of excellence, and their sous chefs say they’ve never seen Rocco so inspired.
ヴァントリオーネは舞台座最大のイベント会場であり、娯楽場であり、ダンスフロアでもある。社交的なロッコはその料理長を務めている。彼はヴァントリオーネの多数の厨房を仕切っているだけでなく、その手は舞台座が所有する多くのクラブやレストラン、食堂、もぐり酒場にも及んでおり、高街のエリート向けの味を作り出している。その食の帝国はニューカペナのあらゆる階層に広がっている。
その運営管理の手際は、厨房での巧みな技に匹敵する。彼らが手がける全ての皿がバランスの極地であり、幾つもの異なる風味と舌触りが合わさって、最もありふれた食材ですら驚きを作り上げる。ニューカペナに光素が導入されると、ロッコの料理は新たな高みへと昇った。こんなにも霊感に溢れるロッコは見たことがない、副料理長たちはそう言っている。
引用:公式記事The Legends You’ll Find in Streets of New Capenna/『ニューカペナの街角』の伝説たち
その1:ノンバイナリー
ロッコは上述したようにノンバイナリーであるため人称代名詞は「they」「their」が用いられているのだが、公式翻訳はロッコを「彼」や複数形の「彼ら」と誤解釈している。
その2:光素が導入されると
「With the introduction of Halo to New Capenna」を公式和訳では「ニューカペナに光素が導入されると」と訳しているが、この内容はおかしい。
「光素」は数世紀の昔、ニューカペナの創設期にまで遡る資源であり、今更になって「ニューカペナに導入される(その結果、最近のロッコの料理が高みに昇る)」という言い方が時系列に矛盾し、そもそも成り立たない。
だから、原文「Halo to New Capenna」の「to」は付属や関係の意味を持っていると考えないとつじつまが合いそうになくなる。「ニューカペナの光素を(ロッコが料理へと)導入すると」という意味合いだ。しかし、「ニューカペナの光素」という言い方もまた日本語としては奇妙に感じるものだが、原文の「Halo」は「天使や聖像の後光や光輪」を指す言葉なので、「Halo to New Capenna」と書くことでただの「後光・光輪(Halo)」では「ニューカペナに限定した意味での『光素』という資源」だと明確化することになるのだ。
MTG和訳では、「Halo」は「光素」と訳され、区別がつけられるようになっている。したがって、「With the introduction of Halo to New Capenna」は訳す際に「ニューカペナ」を省いて「光素が導入されると」と作文しても十分許容できると考えられる。
さいごに
これにて舞台座一家の料理人、ロッコにまつわる話はお終いだ。
では今回はここまで。
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