古龍戦争(The Elder Dragon War)はドミナリア次元の神話時代に起こったエルダー・ドラゴンによる戦争である。別名「巨竜戦争」。
カードセット「団結のドミナリア」では英雄譚カードとなったので、改めて独立した記事にまとめてみた。
記事の前半では、古龍戦争の経緯を時系列順に解説している。本記事のために改めてより細かい検証を行ったものだ。そして、記事の後半には情報の出典と検証課程をまとめてある。
再編集(2022年9月27日):記事の内容を大幅に変更した。神話時代を古龍戦争1つに絞って解説するものとし、上古族と神霊の時代との前後関係は本記事では論じないこととした。
追記(2023年7月26日):資料集Magic: The Gathering The Visual Guideにおいて、いくつかの事柄が明確化されたため、それを記事に反映させた(古龍戦争の終結はどの時点か、タルキール次元でのボーラスとウギンの戦いは何年か)。
古龍戦争の解説
古龍戦争(The Elder Dragon War)はドミナリア次元の神話時代に起こったエルダー・ドラゴン(またの名を古龍)同士の戦争である。
エルダー・ドラゴンの兄弟姉妹やいとこは、その子や子孫共々に殺し合った。
終戦に至った時には、ドミナリア次元上のエルダー・ドラゴンはアルカデス・サボス(Arcades Sabboth)、クロミウム・ルエル(Chromium Rhuell)、ヴァエヴィクティス・アスマディ(Vaevictis Asmadi)、パラディア=モルス(Palladia-Mors)、そしてピルー(Piru)しか生き残れなかった。
ウギン(Ugin)とニコル・ボーラス(Nicol Bolas)も存命だったが、終戦時にはプレインズウォーカーとなってドミナリアを離れていた。
エルダー・ドラゴンの子供世代も、封印された上古族ドラゴン5体も含め、全滅であった。ドミナリア次元に残ったドラゴンはより遠い子孫たち、エルダー・ドラゴンから見れば下級ドラゴン1ばかりであった。
巨竜戦争
巨竜戦争(The Elder Dragon War)はカードセット「団結のドミナリア」収録のエンチャント・カードである。古龍戦争の物語を英雄譚として表現している。
巨竜戦争と古龍戦争
この節では「巨竜戦争」と「古龍戦争」という2つの和訳表記について解説する。
ただし、ストーリーや設定にはほぼ関係が無い内容で冗長なので、折り畳み表示にしている。
古龍戦争の経緯
古龍戦争の勃発から終戦までの大まかな経緯を整理した。
古龍戦争の始まり
AR-20000年頃、エルダー・ドラゴンの誕生でドミナリア神話時代が始まった。それからゆうに数世紀は経過した頃、古龍戦争が勃発する。
戦争の切っ掛けは、ヴァエヴィクティス・アスマディ(Vaevictis Asmadi)とその眷属が数を増やし、パラディア=モルス(Palladia-Mors)を狩場から追い払うほどの勢力になった後、ニコル・ボーラス(Nicol Bolas)の統治する人間居住地を襲撃したことである。
ボーラスは人間の民人を殺された報復に、居住地を襲ったヴァエヴィクティスの子孫7体の内6体を配下の部隊の毒矢と魔術で殺害した。史上初のドラゴンによるドラゴン殺し。これが古龍戦争の始まりだ。
ヴァエヴィクティスとその兄弟リヴァイダス(Lividus)、ラーヴァス(Ravus)、ルブラ(Rubra)の計4体のエルダー・ドラゴンは、進撃するボーラスの部隊を迎え撃った。この戦いを生き残ったのはニコル・ボーラスとヴァエヴィクティス・アスマディの2体のエルダー・ドラゴンのみであった。
ボーラスはヴァエヴィクティスからの追撃を危惧し、その牽制としてリヴァイダス、ラーヴァス、ルブラの子孫に対してヴァエヴィクティスが裏切って兄弟たちを殺したと偽りの情報を植えつけた。
そして、狩り場を追われたパラディア=モルスを探し出しては、ヴァエヴィクティスがいかに弱体化しているかを吹き込んだ。
何年かの後3、こうしてボーラスが広め煽り立てたドラゴン同士の反目は、人間も巻き込んだ世界的な大戦争へと拡大していった。智者たるクロミウム・ルエル(Chromium Rhuell)は諍いから身を守るため、自分とは異なる姿に変身してやり過ごそうとした。
平和と秩序で自国の人間を統治していた賢明なるアルカデス・サボス(Arcades Sabboth)ですら、戦いに参加せざるをえなくなっていった。
古龍戦争の終戦
神話時代の始まりから4000年以上が経過した頃、ニコル・ボーラスはドミナリアの半分を支配下に置いていた。
ボーラスの軍はジャムーラ大陸の戦いにおいて、アルカデス・サボスの軍を撤退させるほどの権勢を誇っており、ニコル・ボーラスの最終的な勝利は間近であったようだ。ところがこの戦いの最中、ボーラスは帰還したウギンと再会し、戦場を放棄してしまう。ウギンを通じてプレインズウォーカーの存在を知り、ボーラスは双子への嫉妬と怒りから灯が点火した。プレインズウォーカーとなったボーラスはドミナリアから旅立った。
世界の半分を支配する最大勢力の長ボーラスが行方不明となった後、アルカデス・サボスはボーラスが残していった勢力を自身の国へと吸収した。おそらくこの時点で古龍戦争は終結を見たのである。4
戦後
遥かな時が流れて伝説時代、おそらくはAR-3000年からAR-1700年のどこかの時点でボーラスがドミナリアに帰還した。5
故郷ドミナリアでは地形が大きく変化して、古龍戦争は既に遠い過去となっていた。エルダー・ドラゴンとその子供世代は、クロミウム・ルエル、アルカデス・サボス、パラディア=モルス、ヴァエヴィクティス・アスマディを除いて全員が亡くなっていた。
ボーラスはアルカデス・サボスの王国を再訪すると、アルカデスの心に民への不信、密告の奨励、そして疑わしきは燃やせ、と悪意の種を植えつけて去った。これはアルカデスの王国崩壊を暗示しており、これでエルダー・ドラゴンの支配する時代が本当の終わりを迎えることになったのだろう。
その後、瞑想領土を来訪したボーラスはウギンと再会。何世代も続く戦いの後にウギンの命を奪ったボーラスが勝者となった。しかし、それでも死亡したウギンは精霊龍として復活し、さらに何千年も先の未来……AR3279年のタルキール次元での決闘、そしてAR4560年の灯争大戦まで、この双子2人きりの古龍戦争は幾度となく繰り返されることになるのであった。
残りの記事の最後までは、今回の記事を書くために行った設定や時代の考証過程の解説である。こっちは人を選ぶマニア向けだろう。
古龍戦争の設定・時代考証
この節では、前節で語った古龍戦争の解釈がどのように導き出されたものか、出典を示しつつ考証した過程を説明しよう。
その1:ドミナリア神話時代という枠組み
まず初めに大枠となる神話時代を確認する。設定集The Art of Magic: The Gathering – Dominariaによると、神話時代(AR-20000年頃からAR-15000年)はエルダー・ドラゴンの誕生に始まり、古龍戦争、上古族の時代、神霊の時代を含んでいる。
その2:ボーラス年代記
2018年の公式サイトで発表されたストーリー連載「ボーラス年代記(Chronicle of Bolas)」(全8話)において、ウギンとニコル・ボーラスの2つの視点から神話時代の歴史が語られた。
※ あまりにも冗長なので折り畳み表示にした。
以上がボーラス年代記全8話から拾い上げた時系列情報だ。
その3:ボーラスの帰郷とウギンとの戦い
ニコル・ボーラスは多元宇宙からドミナリアに帰郷し、その後ウギンと戦い殺すことになる。
これがいつ頃のことかを調べる。
※ こちらも折り畳み表示とした。
その4:ウギンは悪魔的リバイアサンではない
これは検証による副次的な産物だが、神話時代にボーラスと決闘した悪魔的リバイアサンのプレインズウォーカーはウギンではないと確認できた。
※ こちらも折り畳み表示とした。
これにて検証作業は終了である。
さいごに
古龍戦争が英雄譚カード化されたので、改めて神話時代の再検証を試みた。今までとは発想を転換しアプローチも変えてみた。
ただし、これはいわば「異端」な歴史解釈であったと記事投稿後に気付かされた。私の独自解釈はひねりを加えたアクロバットをかましている。これが「正統」な歴史解釈と取られてしまう危険は避けなければならないと考え、記事を大きく再編集することにした。(参考リンク)
再編集後の現在の文章は、なるべく古龍戦争だけに焦点を絞って語ることで、「正統」でも「異端」でもどちらでも矛盾や破綻が出ないように注意を払ったつもりだ。
ちなみに、本記事の投稿当初の内容はこちらの記事に転記して残してある。「異端」な歴史解釈に興味のある方はそちらをご覧いただきたい。
では今回はここまでだ。
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- ボーラス年代記より原文「lesser dragon」。公式和訳版では「劣等な龍」。ドミナリア次元のドラゴンについて「elder」に対して「lesser」という表現は、非公式なファン側からは昔からされていたものの、公式ではこの時がおそらく始めてだ。
- 英語原文は「Argivian」と「Argivia’s」で明確に使い分けており、前者は「アーギヴィーアの」とは訳せない
- 連載ストーリー「ボーラス年代記」第5話、原文「In years to come」
- 資料集Magic: The Gathering The Visual Guideで、古龍戦争の終結は、ニコル・ボーラスのプレインズウォーカーの灯が点火して多元宇宙へ旅立った時点と明確化
- ただし、これが初めての帰郷とは限らない
- 「ボーラス年代記」第7話より原文「There I found the wars between the elder dragons over long since.」。公式和訳版は「そして古龍らが長きに渡って戦っていた。」と誤訳しているので日本語からは正しい意味の読み取りが不可能である。
- 当初は「6000年以上前」との表記だったが後に「6000年前」で定着した