尊敬される語り手、ニアンビ(Niambi, Esteemed Speaker)はカードセット「基本セット2021」収録の伝説のクリーチャー・カードである。
ニアンビはプレインズウォーカーのテフェリー(Teferi)の娘であり、今回でカード化は2回目となる。
追記(2020年10月20日):Secret Lair: Extra Life 2020版のニアンビとテフェリーが描かれたテフェリーの防御(Teferi’s Protection)について追記。
尊敬される語り手、ニアンビの解説
尊敬される語り手、ニアンビ(Niambi, Esteemed Speaker)はカードセット「基本セット2021」でカード化された2種類目のニアンビである。
ニアンビ(Niambi)はドミナリア次元ジャムーラ北西部フェメレフの聖職者である。人間女性。AR4510年頃に生まれ、フェメレフで成長し、このカードに描かれたニアンビはAR4560年現在でおよそ50歳の姿である。
ニアンビは熟練した癒し手であり、太陽崇拝するフェメレフの聖職者でもある。ニアンビは明晰な頭脳を回転させて、フェメレフの人々が互いに団結するように促し、失われた伝統や祖国への理解を深めさせもした。ニアンビは言うことを聞かない大勢の人々を世話してきたが、その中でも自分の父親の世話こそが第一で最重要だと考えている。
ニアンビの両親はテフェリー(Teferi)とスビラ(Subira)である。父のテフェリーは大昔のザルファーの宮廷魔術師で、時を操るプレインズウォーカーであり、そしてかつてはザルファーの破壊者と呼ばれた人物である。一方、母のスビラはジャムーラ最古の隊商といわれるタルジーディ隊商のリーダーであった。
ニアンビの幼い頃にスビラは家を離れてタルジーディ隊商へと戻っており、旅生活のスビラはたまにしか帰宅できなかったため、ニアンビはほとんどテフェリーの手で育てられた。
AR4550年頃から、ニアンビは父テフェリーの謎の探求に手を貸していた。ジャムーラ東亜大陸のティヴァン砂漠(Tivan Desert)にあるウルザ(Urza)の遺跡は何かが隠されていた。それを守る謎を解き明かし手に入れるのがテフェリーの探求であり、ニアンビの頭脳は謎の解明に大いに貢献した。そしてAR4560年、ニアンビの理論をもとに、最終的にはテフェリーの旧友ジョイラ(Jhoira)が率いるウェザーライト号の助力を得ることで、ようやく謎の完全解明に至ったのだった。
その後、父テフェリーはプレインズウォーカーの力を取り戻しドミナリア次元を旅立ったが、最新ストーリーの小説War of the Spark: Forsaken時点ではドミナリアに帰還している。テフェリーは仲間のプレインズウォーカーであるカーン(Karn)、アジャニ(Ajani)、ヤヤ・バラード(Jaya Ballard)と一緒にフェメレフにあるニアンビの家に集まって、新ファイレクシア次元に対抗する計画を練っているはずである。
忠実な癒し手、ニアンビ
“My father will be happy to see you.”
「父もあなたに会いたがっていることでしょう。」
引用:忠実な癒し手、ニアンビ(Niambi, Faithful Healer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ニアンビの最初のカード化が忠実な癒し手、ニアンビ(Niambi, Faithful Healer)である。
彼女がストーリーに初登場したカードセット「ドミナリア」でのカード化であったが、プレインズウォーカー・デッキという特殊な製品での収録であったため、その製品の主役であるプレインズウォーカー・カードを探し出してくるだけというあまり嬉しくない機能しか持っていなかった。
ニアンビが連れて来てくれる時を曲げる者、テフェリー(Teferi, Timebender)は、プレインズウォーカー・デッキのカードなのでコストは重くてカードパワーは控え目である。カード化されたテフェリーは強力なカードばかりだがこれはそうではなかった。
「父もあなたに会いたがっていることでしょう。」
いえ、会いたかったあなたのお父さんはこのカードじゃない。
Secret Lair: Extra Life 2020版テフェリーの防御
“I’ve walked a hundred worlds, but you are my universe.”
「100もの世界を渡り歩いてきたけれど、君が私の宇宙なんだよ。」
引用:Secret Lair: Extra Life 2020版のテフェリーの防御(Teferi’s Protection)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳
2020年11月の期間限定販売の特別製品Secret Lair: Extra Life 2020には新規イラストとフレイバー・テキストを与えられたカードが4種類収録されている。家族と子供の重要性をテーマにしたものが描かれている。
そのうちの1枚が特別版のテフェリーの防御(Teferi’s Protection)である。テフェリーと幼いニアンビの親子がイラストに描かれ、フレイバー・テキストは父テフェリーから娘ニアンビへの愛情深い語りかけとなっている。
記事によると、この新規イラストのプレイマットも期間限定で販売される。
製品の詳細は公式記事Secret Lair: Extra Life 2020を参照のこと。
ニアンビとフェメレフの信仰と伝統
ニアンビはフェメレフにおける太陽崇拝の聖職者で、癒し手であると設定されている。元々フェメレフはザルファーから独立した信仰心に篤い宗教国家であったが、ドミナリアを襲った幾度もの大破壊を乗り越えて、AR46世紀現在のフェメレフにもその信仰が伝えられているのだ。
実は尊敬される語り手、ニアンビのカード・イラストには、このフェメレフの信仰や伝統が色濃く刻まれている。それを解説するために、23-24年前に制作されたフェメレフと太陽崇拝に関するカード群を振り返ってみよう。
フェメレフの太陽崇拝
“The Femeref look only to the Sun for healing; they have never truly understood life’s cycle.”
–Kifimbo, Shadow Guildmage
フェメレフの人々は、太陽にしか癒しを求めない。人々は、生命のサイクルの真の意味を理解していないのだ。
–祭影師ギルドの魔道士、ケフィームボウ
引用:治癒の軟膏(Healing Salve)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
カードセット「ミラージュ」収録の治癒の軟膏(Healing Salve)によれば、フェメレフの人々は太陽にのみ癒しの力を求めるという。太陽崇拝と癒しの力が結びついていることが分かる。
それに対して、「生命のサイクルの真の意味を理解していない」と辛らつであるが、ザルファーの5つの魔術ギルドの1つ、祭影師ギルド側からの発言であるので、否定的になってしまっても仕方がないところだ。
フェメレフの太陽に捧げる歌
フェメレフの太陽崇拝に関して、カードセット「ミラージュ」には「太陽に捧げる歌」が登場している。該当するカードは以下の2種類のフレイバー・テキストである。
“Retainer of eternal Sun! Life flash again upon thy wings.”
–“Song to the Sun,” Femeref song
永久なる太陽の従者よ!また一度、そなたの翼に生命が輝く。
–「太陽に捧げる歌」フェメレフの歌
引用:導きの聖霊(Guiding Spirit)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
太陽の従者たる聖霊天使の導きによって死者が蘇る。
Do not go there, do not go / unless you rise on wings, unless you walk on hooves.”
–“Song to the Sun,” Femeref song
行ってはいけない、あそこへは。行ってはいけない。 / もしもおまえに、羽ばたく翼がないならば。地を蹴る蹄がないならば。
–「太陽に捧げる歌」フェメレフの歌
引用:聖なるメサ(Sacred Mesa)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
陽光さす聖なるメサ(台地)には天馬ペガサスの群れが集っている。
太陽の外套留め
And darkness shall be cast from me
For my soul resides in the Sun.”
–Femeref dirge
そしてわが身より、闇が投げかけられよう。
何故なら、わが魂は太陽の中に住まうのだから。
–フェメレフの葬送歌
引用:太陽の外套留め(Sun Clasp)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
太陽の外套留め(Sun Clasp)はカードセット「ビジョンズ」に収録されたカードである。公式和訳カード名では「外套留め」と訳されているが、「Clasp」は「留め金・留め具」を広く指す言葉で、特に外套に限るものではない。
このカード1枚には「フェメレフの太陽信仰」、「太陽を模した装飾品」そして「太陽光モチーフの紋様」の3要素が盛り込まれている。
まずフレイバー・テキストはフェメレフの葬送歌の一節で、亡くなった者の魂は太陽に住まうと歌っている。
そしてイラストを見ると、留め具と腕輪には太陽を模した丸い円がデザインされており、円の外周に刻まれた隙間なく連なった三角形は太陽光を表現している。さらに赤い外套の下にある革ベルトに目を向けると、ここにも繋がった三角形デザインが確認できる。こちらも留め具と同じく太陽光の図案化であろう。
太陽とグリフィン
ここで少し話がそれてしまうがグリフィンを取り上げたい。フェメレフを含むジャムーラ北西部には広範囲にグリフィンが生息している(いた)のだ。
フェメレフの北にそびえるイーカンドゥー山脈、西側に南北に壁を成すテレムコ山脈も固有のグリフィンがおり、フェメレフ人にとってある程度は身近な生き物であることが想像できる。
あるいは、現在はドミナリア上から消失したザルファーにおいても、西のウンヤロ平原、中央のメテンダ平原、北のダラジャ平原の全てでグリフィンが確認できたのである。
さて、そのジャムーラ北西部には伝説のグリフィン、ズーベリーがいた。
“If the griffins tell of their gods, perhaps they speak of feathers bright as the Sun.”
–Afari, Tales
グリフィンたちに独自の神話があるならば、たぶんその神々は、太陽のように光り輝く羽根をまとっていることだろう。
–アファーリー「語り」
引用:黄金の羽根ズーベリー(Zuberi, Golden Feather)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
黄金の羽根ズーベリー(Zuberi, Golden Feather)はカードセット「ミラージュ」収録の伝説のクリーチャー・カードである。このフレイバー・テキストによると、グリフィンたちが自身の神々を語ったと仮定するならば、「太陽のように光り輝く羽根(feathers bright as the Sun)」をまとっていると語るだろう、と考えられていた。
当然これはグリフィンではない者からの想像に過ぎないが、「ジャムーラ北西部では太陽のように光り輝くグリフィンは神々しい存在であると連想されていた」ことだけは、ここに証拠として残っているのだ。
長々と過去カードを振り返ってきたが、それらがフェメレフの太陽崇拝とどう結びついているのか?次では尊敬される語り手、ニアンビのイラストを見て確認することにしよう。
尊敬される語り手、ニアンビと太陽紋様とグリフィン
23-24年前のカードを振り返って、フェメレフの太陽崇拝、太陽紋様の図案化、グリフィンについて確認できた。では、尊敬される語り手、ニアンビのイラストを観察してみよう。太陽紋様とグリフィンが随所に配置されていることが分かるだろう。
まずは太陽紋様から始めよう、イラストで赤四角で囲んだ部分に注目してほしい。ニアンビの腰の丸い留め具は太陽の外套留めに似ており、腰布やケープ風の上着には連なる三角紋様がデザインされている。背後にある半円形の大窓は外周を三角形の列が取り囲んでいる。向かって左の壁にも三角形の列が並んでいる。
次はグリフィンだが、緑四角で囲んである部分だ。壁の垂れ幕の全てにグリフィンが図案化されて描かれている。背後の大窓には3頭のグリフィンが太陽紋様の半円内に配置されている。
太陽紋様とグリフィンの組み合わせ、そして、ニアンビはフェメレフの聖職者であり、太陽の癒しの力を持つ者である。とすれば、ニアンビがいるこの建物はおそらくフェメレフの神殿に違いない。
これでイラスト1枚にフェメレフの信仰や伝統が色濃く刻まれていると言った意味がお分かりいただけたかと思う。
尊敬される語り手、ニアンビの登場作品
ニアンビは初出のカードセット「ドミナリア」のストーリーでも登場している。基本セット2021時点でも、言及されている記事・作品はそれほど多くない。記事を書く上で参考にしたソースをここにまとめておく。
初出ストーリー:Return to Dominaria: Episode 6 / 公式邦訳ドミナリアへの帰還 第6話
ストーリー:Return to Dominaria: Episode 7 / 公式邦訳ドミナリアへの帰還 第7話
ストーリー:小説War of the Spark: Forsaken(名前だけが言及)
公式記事The Lore of Core Set 2021 on the Cards
では今回はここまで。
尊敬される語り手、ニアンビの関連カード
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